2008年10月24日

枯れぬ華、手折らず〔幻火〕

 青い風――と書くと何やら青春のような響きだが――の便りにて
 知るのが旧友一人の帰還。

 そう言えば何時去ったかも知らぬ儘で居た気がする。
 ひとまずの手土産を持って半裸に問うはスルメ…いや旧友の在処。

 奇声――いやいや寄生していると返る応えに何ンだそりゃと思いつつ
 訪れた先は相も変わらずの二人住まいで。
 そう言えばこの家の主も存外に存命していたのだなと思い出す。

 おかえり、の挨拶をしようとして

 戸を叩きこうと持ち上げた手が、止まった。
 どう声を掛けたものか。

 「元気そうで何より」?
 いや元気かなぞ顔見なければ解らぬし。
 「見送れずすまなかった」?
 出迎える挨拶が見送った際の詫びというのも如何か。
 「またよろしく」?
 それは其れで今更な気がしなくもない。

 悩む己に、らしくないと自嘲の笑み。
 結局戸は叩かぬままに、下ろした手が取り出すのは竹簡代わりのカァド。

 『おかえり』とだけ指先で書いて
 それから少し考えて、裏に一言書き添えた。

 手土産と一緒に包めば、ひっそり窓辺に置き去りに。


 そのうちまた酒呑む機会でもありゃァ良い。

 ひとまずはこれで良し、と
 その場を離れて――暫し。


 ふと、思った。


 例の奇声と一緒に戸開けてやれば良かった。


 いや…それはまた次の機会にしておこう。

posted by アシアン at 12:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 幻火:戯れ事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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